おじき木人拳

menu

10. INXS – Welcome to Wherever You Are

オーストラリア出身の6人組ロック・バンド、INXSの92年にリリースした8枚目のアルバム。

INXSといえば、MTV世代にはお馴染みの『Need You Tonight』や『New Sensation』といった、ファンク/R&Bの影響を取り入れた大ヒット曲を多数収録した87年のアルバム、『Kick』が一般的には有名で、その頃のイメージからノリの良いポップな曲を作る売れ線バンドとして認識されていると思うのだけど、今作はそういうパブリック・イメージから大きく外れた意欲作。

元々はニュー・ウェイヴ・バンドとして始まった人たちなので、おそらくは『Kick』やそれに続く『X』で固まってしまった、ちょっとセクシーでダンサブルな大衆向けの音楽、というアーティスト・イメージを覆したい、という思いがメンバー達にもあったんじゃないかなと思います。
同じダンス・ミュージックでも、もっとカッティング・エッジなクラブ・ミュージックの方に寄っていったというか。

あと、ちょうどこの頃大きなブームになっていたグランジの影響もデカくて、そういう諸々ひっくるめて、それ以前の80’s的な音像や価値観が全部アウトになっていった時代、というのも関係があるのかも知れない。
一周回って今となってはクールなイメージに復権した80’sだけど、このアルバムが出た90年代初頭あたりの感覚では、時代遅れでめちゃくちゃダサいものとして忌み嫌われていたんですよね。
今となっては逆にグランジや当時のクラブ・ミュージックが古臭いものとして聴こえてしまうのだから、本当に世の中は諸行無常ですな…。

そんなわけで、これまでの作り込まれたプロダクションからガラリと変わって、まるでUKのインディー・バンドのような簡素な佇まいのロック・アルバムなのだけど、そんなラフなスタイルが逆にこのバンドの魅力を最大限に引き出していて、個人的には彼らのアルバムで一番好きなアルバムです。

アルバム終盤の内省的な曲はややとっ散らかってて失速ぎみだけど、『Baby Don’t Cry』や『Not Enough Time』といった、高揚感のある名曲たちと一緒に収録されていると、これはこれでありかな、という気もしてきます。

シタールを使ったインド風のイントロから続く、実質アルバムのオープニングを飾る曲。INXS史上最もロックっぽいギターの聴ける楽曲。ヴォーカルがヘタウマだったらどこかのUKインディー・バンドに聞こえそう。
INXS流グラウンド・ビートな曲。じわじわ盛り上がっていくところが格好いい。
ホーン隊含むオーケストラとゴスペル・コーラスを引き連れて、ひたすら同じフレーズを繰り返す大名曲。彼らの中ではこの曲が一番好き。